ひきこもり経験者の日記連載『すぐそこにあること』

ひきこもり経験者のブログ「すぐそこにあること」

番外編 絶望から希望へ~ひきこもり体験を共有しようと思った理由

 不登校だった僕は4年遅れの大学受験にトライした。学習のブランク、中学から高校までの空白、その空白により就職への不安。追い詰められる中、僕は必至で努力した。不登校渦中の体力の低下の改善、昼夜逆転から朝方に変更。電車内で過呼吸になり、電車を克服するため一駅ずつの挑戦、出来る範囲であらゆる努力を試みた。結果、僕は都内の私立大学に合格した。4年遅れの大学合格はスタートラインがようやくみえたような心境だった。


しかし、精神的に追い込まれた末の受験が負担になり、僕は精神疾患になった。そして、自宅にひきこもらざるを得なくなった。
 

 大学受験に向け努力した結果が精神疾患。報われない努力に歯がゆく、家族に八つ当たりする日々だった。同世代の多くは就職し経済的な自由を手に入れ、友人に囲まれ、中には結婚している人もいただろう。孤独と絶望の中、そういった幸せを心の底から憎んだ。「人生にピリオドを打とう」そんな夜を幾日も過ごした。それでも僕は人と関わりたい、経済的自立に少しでも近づきたい、近づかねば先はない。そういった考えが根底にあった。


精神疾患は状態に波があるのが特徴で、良いときは前向きに考える事、自宅から出ることも出来た。逗子の『悠遊学舎』、『アンガージュマンよこすか』といった不登校・ひきこもりの人たちが通う居場所、就労支援機関、精神科へ行った。その活動を通し、子ども若者応援団主催の滝田衛さんに出会い、講演する機会、書く機会を頂き、それに食らいつくことで、他者に認めてもらい、次第に自信を付けていった。対人関係のブランクが20年ほどあった中「よくできたね」といった上から目線の誉め言葉ではなく「我々は新舛さんの経験に学ぶ」に心から嬉しくなった。


近年『ひきこもり新聞』に代表されるように、ひきこもり経験者による発信がトレンドだ。その発信に苦しいのは僕だけではなかった。そういった安堵感をもらった。


僕も不登校・ひきこもり体験を発信し、共感の力を作っていきたい。未だある不登校・ひきこもりは怠けという誤った見方を変えていきたい。僕のこうした活動が少しでも役に立てば、それまでの不登校・ひきこもり体験が絶望から希望に変わるのかもしれない。経済的な自立は達成してないけど、精神疾患の回復と関わった人たちのエネルギーからこうした活動をしようと思えるようになった。