ひきこもり経験者の日記連載『すぐそこにあること』

ひきこもり経験者のブログ「すぐそこにあること」

不登校になった僕だから経験したこと

僕は不登校のため高校進学が同級生と比較して3年くらい遅かった。そして大学受験は4年遅れた。そのため予備校に入学したはいいが、共に学ぶ生徒のほとんど年下だった。予備校にはチューター制度というのがあり、大学生の予備校OBOGが無料でわからないところを教えてくれる制度だ。僕は21歳だったので、ほとんどが年下もしくは同じ年くらいのチューターだった。
 
〇たった1年の差
 

 話は小学校時代までさかのぼる。僕は小学校の時もいじめにあっていたり、友人に恵まれなかった。それでも通っていた学校の穏やかな校風が好きだった。特に新入生が入学してくると、5・6年の高学年の生徒らが1年生の使用していた教室を掃除する、わからない事があったら教える。高学年の生徒は低学年の生徒に優しく接し出来る限りフォローする。そのように厳しい上下関係はほとんどなかった。一転、中学校はガチガチの上下関係にかわり、僕は長男だったこともあり戸惑った。
 

 中学校生活のある日のエピソードを紹介しよう。学校生活の一日が終了する午後、友人と帰宅しようと学校を出ようとしたとき、見るからに強面の先輩がこちらに来て、「同級生のAはどこにいるのか」と明らかに機嫌が悪そうに尋ねてきた。僕らはトラブルに巻き込まれたくないし、その友人を守りたいと思ったので、知ってはいたが、「知りません」と嘘をついてその場を立ち去った。どうやらA君は同じ部活の仲の良い先輩にため口をきいており、その先輩の友人がA君を生意気だと目をつけ探していたそうだ。僕はそのことを聞いて背筋がぞっとした。「口の利き方が悪い」たったそれだけで、上級生から目をつけられ、追い回される。さらに、それらの状況にストレスをためた同級生は、早生まれの僕に尊大な態度をとった。そのようなことを経て、僕の思考回路は上下関係でガチガチになった。
 
〇年齢の壁


話は予備校に戻る。僕はチューターらに年齢の壁(年下に敬語で聞くことに抵抗)があってどうしても質問するが出来なかった。そこで僕はチューターとやりとりしている職員らしき人に質問してみた。        


当時、予備校の授業をいくつかとったものの、予備校の空調が効きすぎていたため、腹痛に悩まされ授業にでない日も増えてきた。それに授業にでるより自分で学習したほうがいいのではないかという考えもあった。さらに、不登校によって英語のブランクがあり英単語を記憶する量がまったく足りない、中学校レベルの漢字さえ書けない、そんな年下の学生には言いづらい悩みを話した。覚えてる範囲でその時もらった答えは、まず、出来るだけ授業に出ること、評判がいいチューターがいるから質問してみれば漢字の覚え方や英単語の暗記方法を教えてくれる。確かそんなアドバイスだった。
 
〇言えなかった真実


そういったアドバイスもあり勇気を出して、年下のチューターに質問をしてみた。


チューターは有名大学の学生が揃っており僕は期待した。僕の学習方法よりもっと効率のよい学び方がきっとあるに違いない、僕のレベルの質問なら簡単に答えてくれるだろう。そんな期待を裏切り、通り一遍の答えしかできないチューターが多かった。


その中で、群を抜いて頭がいいチューターに出会った。彼は現役で東大に入り、チューターにもかかわらず予備校で授業を担当するほど頭も評判も良かった。文学部に所属し、現代文はどんな難問でもわかりやすく答えてくれた。驚くことに、僕が習っていた現代文の講師より、彼の解説はわかりやすかった。そのため、わからないことがあるたびに彼に質問に行った。


そういった関係においても、僕は彼に敬語で質問することに違和感しかなかった。彼は僕の年齢を知らなかったので、年下の予備校生と思われ、ため口で話してくる。そんな関係を何度も断ち切ろうとしたができなかった。今日こそ、年下のチューターに「僕は君より年上だから敬語で話してほしい」そう意気込んでも元来気が弱いの僕にはとうてい無理だった。当時は友人もおらず誰にも相談できなかった。それ以上に僕と同じ年下の先輩に接する人がいなかったことが心細かった。
 
〇過去の選択

不登校によって、同級生と進学のペースがづれると、こんな思わぬ場面で苦戦する。もちろん将来就職する際に履歴書の空白を指摘されることも怖かった。


学校に行かない程度で様々な不利益を被る。もしタイムマシンがあれば、過去の僕にいじめられていても学校に行くことを強く勧めることは間違いないだろう。それほど、日本社会において学校に行かないデメリットは大きい。だから皆学校に行かざるを得ないのだ。