ひきこもり経験者の日記連載『すぐそこにあること』

ひきこもり経験者のブログ「すぐそこにあること」

就労支援がひきこもり解決に結びつくのか

就労支援に疑問を感じる。ひきこもり界隈(当事者を中心としたひきこもり業界)で言われていることだ。
 
 僕も長く就労を目指していたが、なかなかその場にたどり着けない。
 
 では、就労支援ではなく、何を支援、サポート応援してほしいのか。それは「幸せ」(ひきこもりUX会議代表理事林恭子氏の幸せになる支援より)だ。人間は幸せになるために生きてきたと思う。幸せとは、お金を稼いで自立して、欲しいものが買えたり、旅行に行けたりすることかもしれない。しかし、現在就労支援は機能しているのだろうか。ひきこもり問題と言われる中で、メインの支援は「就労支援」。そういった支援がうまくいってないから問題が長期化しているのではないだろうか。
 
 ひきこもりの人は働いていない、だから就労が本人のためになるはずだ。そういった支援の側の主観が、支援される側とのミスマッチがおきているのではないだろうか。
 
 
 個人的な体験で申し分けないのだが、僕は就労とは異なる場で活動してきた。逗子の遊悠楽舎アンガージュマンよこすか、NPO法人メンタルコミュニケーションリサーチ、湘南の凪等。そして、「こども若者応援団」にたどり着いた。そこは就労支援とは無縁の場であった。毎月のミーティングと年に数回の講演会と研修会、通信の発行。その場には、当事者の親御さんや、塾講師、公務員、会社員などあらゆる職業の集まりであった。具体的なきかっけは、前述の「アンガージュマンよこすか」という不登校、ひきこもりの人が通う場に数年通い、そこで、アンガージュマンよこすか理事長(当時)滝田さんと出会った。滝田さんはいつも笑顔で僕らを受け入れて、対等に接してくれた。
 
 そして、僕は滝田さんのファンになり、滝田さんがこども若者応援団を立ち上げた当初から毎月のミーティング&意見交換の場に参加した。
 
 こども若者応援団とは、多様性、マイノリティな人を応援しよう。さらに会員の活動を応援するという団体だ。そして就労支援というキーワードは出てこなかった。
 
 例えば、会員が無料塾の経営ならそれを応援すること。僕の書く、話す活動を応援してもらった。「就労」という二文字がないから長く在籍できている。本当にそう思う。
 
 就労支援に嫌悪感がある理由は、社会構造にも問題がある。日本では、新卒一括採用で、雇用の流動性が低い。だから一度レールから外れると再び就労することは難しい。
 
 また就労とは綺麗な履歴書が求められ、高校中退、大學中退、キャリアの中座は大きなマイナスになる。そして、就労とは自身のキャリアを振り返る作業でもある。
 
 僕はキャリアなんてものはないし、学校だって人には言えないような学校しかでてない。それを直視していく就労支援には耐えられない。もちろん、その中でも多くの人は頑張っていくのだろうが、ひきこもった状態ではあまりに難しい。
 
 
 やはり、幸せになることを目標にして、その結果が就労であれば構わない。そういったアプローチをしてほしい。まず就労ではなく、今までの話を聞いて、これから「幸せ」に向かってどう人生を描いていくのか、それを考えていく支援であってほしい。
 
資本主義の世の中、社会保障といったセーフティーネットはあるが、どうしてもお金は必要になる。そこの問題をどう考えていくのか、僕自身の課題でもあり支援側の課題でもある。しかし、まずエネルギーを溜めて、その中でどうやって生きていくのか。その問題を抜きに、すぐに就労と言われれば、僕を含め多くの人も脱落するのではないか。
 
 順序が違うだけではなく、各々が幸せをどう描いていくのか。就労しなくても、起業やインターネットで稼ぐといった手段もある。在宅ワークも少ないけどある。さらに、専業主婦も立派な仕事なら、家事労働、ボランティアも選択肢に入るだろう。
 
 僕も最近、家事を手伝えるようになった。晩御飯の支度や片付け。それも立派な仕事だと考えて前向きにトライしている。もちろん、仕事をしてお金を稼ぎたい、だけど難しい。そういった矛盾した考えがある。それは未婚の人が結婚したいだけど。。。派遣の人が正社員になりたいけど。。。起業してみたいけど。。。転職してみたいけど。。。そういった構造にもあてはまる。
 
 世の中には働いていない(賃金を得ていない)人も多い。専業主婦、学生、定年退職した人他。それでもそこに「差別」はない。まだまだ考えることも多いひきこもり。これからも問い続けていこうと思う。

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